批評『グレイテスト・ショーマン』〜映画の在り方〜
ミュージカル映画。そう聴いて思い浮かべる作品はどれだろうか。
「サウンド・オブ・ミュージック」や「ラ・ラ・ランド」、「レ・ミゼラブル」、「アナと雪の女王」など誰もが知る傑作の名前が挙がると思う。
そしてこれらの傑作たちと肩を並べる、いや越える事となった作品が、今回紹介する『グレイテスト・ショーマン』である。
誤解を恐れずに先に結論を述べたいと思う。本作『グレイテスト・ショーマン』は「映画」としての出来は決して高く評価できない。実際に本作は当初、批評家からの厳しい評価を受け米Rotten Tomatoesでは約半分の批評家が否定的な評価を示した。
私自身もこの評価は妥当なものであると感じる。全体を通して美化されすぎた物語であることは否めないし、そのためかキャラクター達に深く感情移入することも難しい。
また社会的な偏見や差別の対象となってきたマイノリティがその不条理を打ち破る物語として見ても、やはり構成が希薄で単調である。
批評家からの厳しい評価や、同時期に公開された他の話題作も相まって、公開後3日間の興行収入は880万ドルという悪い滑り出しとなった。
しかしその興行収入は公開から3ヶ月が経とうとしている今、1億5000万ドルに到達する事が確実となった。公開3日目の数学からは考えられない興行収入である。
本作がこのような快進撃を見せた理由は、実際に劇場に足を運びこの映画を観た方々なら、なんとなくでも感じ取れるのではないだろうか。
それを表現するには「映画の本来の在り方」、「映画の理想形」について言及しなければならない。
「映画」とはどうあるべきか。
私なりの言葉で表すなら、「映画館を出たその瞬間、景色が変わって見える」ものであるべきだ。
そして「僅か2時間の経験が、色褪せる事なくこの先の人生に影響を与え続ける」ものであるべきだ。
『グレイテスト・ショーマン』を鑑賞し映画館から足を踏み出したその瞬間、私たちは世界がひび割れる音を聴くだろう。
こんなにも世界は美しいものであっただろうかと首を傾げ、しかしその首は次第に頭の中を流れる音楽と共に揺れ始め、そして無意識に歌を口ずさむ自分に気が付く。
この映画は哀しみに溢れた世界を打ち砕く槌である。
『もっとも崇高な芸術とは人を幸せにすることだ』 P.T.バーナム
まさに彼の言葉を体現した映画だ。
周りの評価や批評ではない。ただ、観た者を心から「幸せ」にする事だけを徹底してみせた。
まさしくこれが『The Greatest Show』であることに異論など無いだろう。
本作について語りたいことは山ほどあるのだが、まだ観ていない方には出来るだけ白紙の状態で鑑賞して頂きたいので、この辺りで筆を置こうと思う。
「本物」とは何か。
「偽物」とは何か。
「幸せ」とは何か。
「信じるべきもの」とは何か。
この答えは全て『グレイテスト・ショーマン』の中にある。
ぜひ劇場でそれを見つけてきて頂きたい。
ここまで読んで下さりありがとうございました。